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切ない想い出(後編)

    湖(海)面上のショーが始まった。
    美佐子「すごい。お部屋の中でショーが見れるのね。!」

    当日は、あいにくの雨であったが、担当者がバルコニーの窓を開けてくれた。

    ショーもクライマックスになると、美佐子とクロサワはバルコニーに出て、思いっきり手を振っていた。

    ショーが終わると、美佐子は心なしか淋しそうだった。
    どんな物語にも、必ず終わりがある・・・

    やがて、辺りが暗くなりかけた時、担当者が「ご用意が出来ました。」ときた。
    何が?と尋ねる美佐子を、円卓に座らせると、目を閉じる様に言った。

    準備室の扉が開き(スイートには、食事等の準備室と裏口がある。)ホテルのスタッフ数名が、ディナーの用意を手際よくする。
    最後に、ワゴンに乗った誕生ケーキが運ばれてきた。

    クロサワ「HAPPY BIRTHDAY ! 目を開けていいよ。」
    美佐子は、目を開けた。
    クロサワ「鼠顔のケーキだよ。」

    美佐子は、ケーキを見つめて、大粒の涙をこぼした。
    数名のスタッフも拍手して、美佐子の誕生日を祝ってくれた。
    シェフが挨拶に来ると、美佐子は嬉しそうに、「おいしいです!」と何度も答えていた。

    そして夜がきた。
    長いシャワーからやっと上がってきた美佐子は、部屋の電気を消すと、クロサワに抱きついてきた。

    クロサワは、美佐子と初めてキスをした。
    キスに緊張するなんて、小学生以来の事だと思いつつ、ベッドに寝かせると、美佐子も緊張している様だった。

    クロサワ「大丈夫?」
    美佐子「うん。」
    胸に手を入れようとすると、美佐子が手を押さえた。
    美佐子「笑わないでね。」
    クロサワ「何が?」
    美佐子「えっちするの、はじめてなの」

    クロサワ「俺でいいのかい?」
    美佐子「うん」

    体が求め合う以上に、心も求め合うセックスは最高だと感じる。
    二人は、初めてのメールや電話の時の様に、一睡もせず抱き合った。

    朝になり、部屋での朝食が終わると、美佐子は時間を惜しむかの様に、「もう一度抱いて」と言って来た。
    朝の光につつまれた美佐子の裸体は美しかった。

    美佐子「ずっと、一緒にいたい。」

    別れ際の美佐子の言葉を思いだすと、今でも切なくなる。

    終わり