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切ない想い出 (前編)

    3年前の6月、ホテルの部屋で撮った写真を見ると今でも切なくなる。

    美佐子は、親友のルビがAV初出演の時、心配でついて来た娘だった。
    撮影中は一言も口をきかずに、ルビがガンガン犯されて喘ぎまくるのを、隣の部屋から見ていた。

    撮影が終わって、スタッフ一同で食事をする事になり、クロサワは、ルビと美佐子の間に座った。
    アルコールが入り、場もなごんで来た時、ついに美佐子がしゃべった。

    美佐子「ルビ、気持ちよかった?」
    ルビ「うーん。最初は緊張してたからよくわからなかったけど、途中からよすぎて、わかんなくなっちゃった。」
    スタッフ「ルビちゃん、初めてとは思えなかったよ」
    ルビ「えへへへっ。まじ、気持ちよかった。」
    スタッフ「大女優になるね!」
    ルビ「また、撮られたい!って、感じぃ~」
    スタッフ「はははは!。今度、二人で出ちゃえばっ」
    ルビ「そうそう。美佐子、演劇なんかより、気持ちいいよっ」
    美佐子「・・・」
    クロサワ「へぇー、演劇やってんだぁ」
    美佐子「・・・」

    美佐子とは会話もないまま、打ち上げは終わった。
    それから、1週間位したある日、携帯にメールが入った。
    「先日は、すいませんでした。・・・」
    かなりの長文であったが誰からのメールかわからなかった。
    内容から察すると先日撮影したルビの親友ではないかと思ったが、確信は持てなかった。
    しかも、美佐子という名前も当時は忘れていた。

    とりあえず、返事を書いてみたら直ぐに返事がきた。
    クロサワは、携帯では長文がニガテなのでPCのアドレスを教えると、メールのラリーは朝まで続いてしまった。
    それからは、毎日最低でも1通はメールが来て、仕事の合間の楽しみにもなった。
    逆に、クロサワが現場多忙で、1日返事を出さないと、心配したメールが来た。

    そんな彼女のメールに変化が現れた。TVの仕事が入る様になったらしく相当忙しくなってしまった様で、精神的にまいって
    来たのが文面から感じられる様になった。
    ある晩のメールで、「電話で話したい。」というので、自宅の番号を教えると、すぐに掛けてきた。

    美佐子「もしもし、美佐子です。」 その時、名前を思い出した。
    電話で話すというのは、メールと違ってまた楽しいものである。
    また、あっという間に朝方になってしまった。

    それからは、メールが来た後に電話で話をする様になった。
    お互いに電話を切るのが惜しいぐらい、いろいろな話をして気づくと何時間も経っていた。
    やがて、彼女の活躍をTVで見かける様になり、クロサワは自分の職業柄もあり距離を置くべきと考た。そして、彼女には
    時折のメール交換のみにしようと提案した。

    彼女は電話でずっと泣いていた。

    そして、涙声でやっと話し始めた。
    「6月○日は私の誕生日なんだ。」

    毎年、一人の誕生日を過ごしているので、今年は一緒にいて欲しいという。
    クロサワ「じゃあ、美佐子ちゃんが、これから仕事をガンバるなら、なんかプレゼントするよ」

    美佐子は、物は何にもいらないという、想い出が欲しいと言う。

    美佐子「クロさんが、一番いいと思うホテルに連れてって」
    クロサワ「海外に行く?」
    美佐子「ううん、国内でいいの。そのホテルの一番いい部屋がいい。」

    クロサワは、いくつかのホテルが候補にあり迷ったが、以前から電話の話しの中で、美佐子もデートで行きたい場所として
    言っていた場所を思い出し、そこに決めた。

    クロサワ「わかった スイートを予約するよ。楽しみにしててね。」
    美佐子「うん!」

    当日、浦安に近づくにつれ、美佐子は「まさか?まさか?」を連発していた。

    美佐子「どこのホテル?」
    クロサワ「秘密」
    美佐子「あれ、通りすぎちゃうの?」

    ホテル群を通り抜け、唯一アトラクション内のホテルへと向かった。
    ホテル玄関に車を乗り入れると、責任者と担当者が玄関まで出てきていた。

    ボーイ「ブォン・ジョルノ」
    クロサワ「ブォン・ジョルノ」

    責任者「クロサワ様、お待ちいたしておりました。」

    担当者「お部屋のご用意は出来ておりますので、チェックインもそちらで」

    一般の宿泊者と違う対応に、美佐子は目に涙を貯めている。

    両開きの扉を開けて、通された部屋はかなり広い。
    美佐子「ここが、スイート?」
    クロサワ「そうだよ。ここが、このホテルで一番いい部屋だよ」

    担当者「私くしが、クロサワ様を担当させて頂く○○です。」
    クロサワ「じゃあ、写真撮ってもらおうか?」

    美佐子と二人でソファーに座って、最初で最後の写真を撮った。

    つづく

    コメント
     うわー。ドラマのようだわー。ヴォンジョルノ・・そんな言葉で挨拶されてみたい♪♪ 演出がスゴイですね~!さすが監督だわー(*´ェ`*)ポッ
    2005/6/24(金) 午後 1:08

    知り合いで、あのホテルに行った人が、ボーイにボンジョルノと挨拶されたのに、名前と勘違いして、「いいえ違います」と、言ったとか・・・ 「ボンジョルの?」と、思ったのか?(笑)
    2005/6/24(金) 午後 2:30