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釧路で、もう一度逢いたい。(後編)

    (昨日の続き)

    東京で仕事をしていると、毎日の様に瞳から電話がかかってきた。

    瞳「いつ帰ってくる?」
    クロサワ「うーん。来週はなんとか・・・」

    クロサワも、多忙になった事もあるが、釧路への往復が時間的負担にもなっていた。
    釧路に行く予定を何度も延期していたある日の電話で。

    瞳「あのね・・・」
    クロサワ「ごめんないつも。」
    瞳「うん。いいよ。私は・・・でも、、、」
    クロサワ「?」
    瞳「私ね、結婚する事になりそう。」
    クロサワ「えっ?」

    なんと、答えていいかわからなかった。やっと言えたのは、

    クロサワ「おめでとう。!よかったなぁ。」
    瞳「・・・」
    クロサワ「・・・」

    お互い無言のまま、どちらからともなく電話を切った。
    それから、クロサワも仕事に手がつかなくなり、翌日に釧路に飛んだ。

    夜、アパートに行き扉を叩くが誰も居ない。

    近くで待っていると、一台の車が来て、表通りで停まった。
    暫くして車から降りてきたのは、瞳だった。

    瞳は、車が走り去るのを見てから、民家の間を抜けて、自分のアパートに入ろうとした。
    その時、クロサワも車から降りて瞳に近づいた。

    クロサワに気づいた瞳は、愕然として体を震わせている。

    クロサワ「お前が、結婚だなんて、嘘だろ?」
    瞳「・・・」
    クロサワ「さっき、瞳を送ってきた奴と結婚するのか?」
    瞳「・・・」
    クロサワ「本当に結婚するなら、このまま帰る。」
    瞳「でも、もう、、、遅いよ。ヒカルちゃんとは逢えないょ。」

    クロサワは、扉を閉めようとする瞳の部屋に入った。
    そして、部屋の中を見ると、クロサワの服がかけてあり、写真立てもそのままにある。

    クロサワ「ごめんなぁ。淋しかっただろ?」

    瞳は溜まっていたものを吐き出す様に一気に泣き崩れた。
    クロサワは、黙って瞳を抱きしめた。
    瞳は嗚咽が止まると、震えながらゴメンナサイと何度も言った。

    クロサワ「もういいよ。悪いのは俺だよ。」
    瞳「でも、でも、でも・・・・(泣)」

    瞳の手に、1万円札と5千円札が握り締められているのに気がついた。

    クロサワ「さっきの車の奴か?」

    小さく頷く瞳の手から、札を抜き取り玄関に投げた。
    それから、瞳と無理やりキスをして、床に押し倒した。

    瞳「やめて!。」

    拒まれながらも服をむしり取る。
    パンティを強引に下ろして、瞳の足の間に割り込んだ。

    瞳「わたし、、、もう、汚いよっ。」

    横を向いたまま、閉じた目から涙が溢れていた。

    クロサワ「瞳っ。」 

    濡れてもいないのに、強引に入れて突いた。
    抵抗をやめた瞳はされるがままになり、やがて愛液が溢れ出すと、それで二人の溝が埋まっていった。

    瞳「ヒカルちゃん! いくぅっ!」

    瞳は、果ててもキツクしがみついてる。クロサワも、離さなかった。

    瞳「逢いたかったよぉ・・・」

    髪の毛を撫でながら、訳を聞いた。
    瞳「援助なんてしたくなかったよ。・・・でも、どうしようもなかった。」
    クロサワ「?」
    瞳「本当は、もっとお話したかったの」

    クロサワへの電話代が家計を圧迫していたとは知る由もなかった。

    クロサワ「言ってくれよ」
    瞳「だって、自分のせいだから・・・言えないよ。」

    最初にクロサワと出合って、携帯に掛けていた電話代が莫大になり、支払いに窮したという。それで、電話をかけられなくなり、会う前に別れるしかないと考えたという。

    そして、クロサワと逢ってからは、掛かってくるのを待っていたが、一緒に住む様になって、クロサワが東京出張の時、我慢が出来なくなり、かけているうちに、また通話料の高額請求が来てしまったらしい。

    クロサワ「ごめんな。俺がもっと気をつかうべきだった。」
    瞳「ううん。・・・でも、ヒカルちゃんの嫌いな女になっちゃったよ。」

    すぐにでも、瞳を連れて帰りたかったが、クロサワには言い出せない事実があった。それは自分の職業である。

    クロサワ「俺も、瞳にあやまらなければならない。」
    瞳「?」

    クロサワ「今まで、言ってなかったけど・・、、俺はAV監督をやっているんだ。」
    瞳「えっ?」

    何も隠さずに全てを話した。瞳は黙って聞いていた。

    瞳「・・・」

    クロサワは、嫌われたと思った。

    瞳「・・・よかった。」
    クロサワ「?」
    瞳「それがヒカルちゃんのお仕事なら、私は平気だよ」
    瞳「今まで、怖かったのは、東京には別の人がいて、私は釧路の女なのかと・・・ 」
    クロサワ「そんな事はないよ。」
    瞳「わたし・・・、東京に行ってもいいの?」
    クロサワ「もち、来てよ、明日一緒に東京に帰ろう。」
    瞳「えぇぇっ(笑)、だって荷物とか、どうするの?」
    クロサワ「全部、処分しちゃえよ。」
    瞳「お仕事だって、辞めるって言わなきゃ。。。」
    クロサワ「いいじゃん。そのまま行っちゃおう」

    翌日、東京に戻るのを延期して、車や家具の処分を始め大家の所にも一緒に行って、契約解除の話しをしたので、一緒に東京に戻れると思ったが、勤務先が難色を示し、結局は1ケ月後に東京に来る話しとなった。
    布団1つと、手荷物だけのがらんとした部屋は、すごく殺風景だったが、瞳がいればそれでよかった。

    瞳「ねえ?」
    クロサワ「なに?」
    瞳「初めて会った日の事、覚えてる?」
    クロサワ「貧乏な格好して、窓ガラスをトントンって?(笑)」
    瞳「ひど~い(笑)」
    クロサワ「ははは。嘘だよ。」
    瞳「あの日、一緒にどこかへ連れ去って欲しかった。」
    クロサワ「?」
    瞳「この町から出たかったの・・・。」
    クロサワ「じゃあ、あの日連れて帰ればよかったなぁ」
    瞳「うん。・・・・だから、東京に行くときは、あの場所まで迎えに来てくれる?」
    クロサワ「わかった。」

    東京に戻った翌々日に、瞳から電話があり、日赤病院に検査入院する事になったという。
    こちらから連絡できないまま、約束の日が近づく。

    瞳からの連絡もなく心配なので、釧路に行こうと思った時、電話があった。

    「あの、・・・、すいません。・・・、まってないでください。本当にごめんなさい。」

    そう言うと電話が切れた。瞳からの電話なのかそうでないのかも、今では分らない。
    ただ、これで全てが、終わった気がした。

    約束の日、瞳の電話を待ち続ける心を紛らわすために、AVの撮影を入れた。

    女優「このホテル、すごく、いいですねぇ。」
    クロサワ「・・・」
    女優「私、さっき、彼氏にフラレました。しょぼ~ん。」
    クロサワ「・・・」
    女優「このまま泊まってもいいですか?」
    クロサワ「別に、いいけど・・・。」
    女優「うわぁ~。らっきぃ!。元カレともこんないいホテルに来たことありません。」

    時計を見ると、夜の10時を過ぎている。
    クロサワ「じゃあ、撮影はこれで終了するよ」
    女優「うふっ。恋人気分で、いっぱいしちゃいましょう!」

    本当だったら、瞳とこのホテルに来る予定だった。

    女優「ヒカルちゃん。って、呼んでもいいですか?」

    バッグから、今日の釧路-羽田の最終便チケット2枚を出して、ビリビリに破りゴミ箱に捨てた。

    クロサワ「もう、なんでもいいよ。」

    つづく